山東省の食ガイドSIGHTSEEING

皇帝も舌つづみを打つ孔府料理

魯菜(=山東料理)は、近代になって初めて盛況になってきた新興勢力ではなく、早くは春秋時代にこの山東の大地でその味はすでに確立されていました。斉は、渤海と黄海に囲まれているという利点によって、新鮮な魚介類が豊富で美味しく、海鮮料理を得意とし、首都・臨淄、即ち現在の淄博を中心に海の幸を堪能する美食の伝統を展開しました。

魯は、諸侯の中でも、その地位がやや特殊でした。なぜならば、周の武王が、自分が天下を治めるための補佐をしていた弟の周公旦を魯に封じ、周の皇帝の周辺と非常に親密な関係となったため、魯は諸国から尊敬の念を集めました。さらに周の宮廷料理も魯の首都・曲阜で定着して芽を出し始め、伝承されていきました。
さらに重要なことは、魯が至聖先師(=孔子に対する尊称)・孔子を生んだことで、彼が率先して提唱した儒家の学説は、後世の帝王から尊重され、孔子の子孫も代々、皇室の爵位や財物を受けました。帝王と皇后、貴妃だけでなく、将軍と宰相までもが孔府を訪れ、勤めをしたため、孔府では当然の成り行きとして宴席が設けられ、宴客を丁寧にもてなしました。さらに、長い年月に及ぶ人材の育成が融合し、自然と孔府の厨房を歴代の宮廷料理の集大成の地としました。そのため、清代の皇帝の食事用の厨房には山東の名人料理人が多く出現したと言われていますが、嘘ではありません。

孔府料理は宴席料理と日常の家庭料理の2種類に分かれます。宴席料理の最高レベルは、当然皇帝に召し上がっていただく満漢級宴席(=満族と漢族の料理を備えた宴席料理)ですが、テーブルの上の食器だけで404個、料理は196種類もあり、食べるだけでも三日三晩食べ続けてやっと終えることができるほどだったそうです。

孔府の厨房の196種類にも及ぶ大量の料理を見て、孔府料理は「多さ」で勝負しているとは思わないでください。実際には「三精四美」こそがその真髄なのです。いわゆる「三精」とは、一つ目は、材料が非常に良く、高貴な材料を厳選しているということです。例えば、フカヒレ、ツバメの巣、熊の手など、材料の選択は非常に厳しく行います。二つ目は、形を美しくすることです。選択して使用する食材、盛り付けの容器と付けた料理の名前は巧妙に融合していなければならず、それによって初めて貴賓に理解してもらえるのです。三つ目は、調理技術が熟達し完璧であることです。孔子の言葉「食不厭精、烩不厭細(=食事を作るには丁寧にすればするほどよい、肉を焼くにも丁寧にすればするほど、香りが漂えば漂うほどよい意味)」にあるように、細かく丁寧に作ることが原則です。「四美」は、味が美味しいこと、色彩が美しいこと、料理の形が美しいこと、盛り付けの器が美しいことを指しています。孔府の宴席がこのように美食、美学と文化の盛宴であったため、歴代の皇帝が名声を慕ってやって来て、長きにわたって衍聖公家(=孔子の代々の家)に伝わった美味しい料理を食べたがったのも不思議ではありません。

孔府料理を食べるにあたっては、各料理の名前或いは由来、雰囲気、高貴さ、性質などほとんどすべてに故実(=儀式、作法、服飾などの古いきまりや習慣)があるため、料理を食べれば経書を読まない人であれ、全身にその由来が押し迫ります。最も有名な「詩礼銀杏(=孔府料理の1つ)」のように、これは孔子が息子・孔鯉に対して行った庭での教えであり、宗の時代、庭に銀杏が育ち、その後長い間名声の衰えないこの人気料理を生み出したのです。孔府の慶事・祝寿の宴会に必ず準備する有名料理「八仙過海閙羅漢」については、題材は「八仙過海(=8人の仙人が海を渡ったという逸話)」に由来しており、鳥の胸肉を切って羅漢銭状にし、ナマコ、アワビ、鰾(=魚の浮き袋で作った食品)、エビなどのすばらしい材料を加えたもので、湯気がもうもうと上がり、活気があって美味しい料理は、お客様を最も喜ばせることができます。

孔府には「一品(=最高級料理の意味)」という言葉が使われている料理が多くありますが、これは決してむやみに尊大ぶっているわけではなく、本当に皇帝や主人が与えたもので、特にこの「孔府一品鍋」は代々伝わってもてはやされてきた最高級のおいしさです。孔府の餞別の宴の有名料理「陽関三畳」は、題材を王維(=唐代の詩人)の「渭城曲」から取っており、料理人が、卵焼き、鶏肉、野菜の三種の食材を重ねて作る料理で、料理の名前と絶妙に呼応し、ぴったりしているのは他に類がありません。近年、曲阜地区の専門家や学者は、研究・考証に努力しており、すでに126種類の孔府の絶品料理と66種類の孔府のデザートを探し集めており、孔府の高貴で気高く雅やかな文化・美食・もてなしの宴を伝承し続けていければと希望しています。次回、山東省へ観光に来た時には、必ず曲阜を訪れ、皇帝も舌つづみをうったとという孔府料理をぜひ楽しんでみてください。